『大・会・食』第一話 縄文

第一話 縄文、火と土の記憶

その日、男が卓上灯炉に火皿を置いた瞬間、
遠い地層の奥で、何かが“ポン”と跳ねた。

縄文である。

土器の記憶がざわめき、
火の匂いが地中から立ち上がり、
そして、彼は現れた。

縄文の火の使い手。

彼は言葉を持たない。
だが、火を見れば語る。
土を触れば笑う。
そして、卓上灯炉を見た瞬間
「あ、これ、俺のやつじゃん」
という顔をした。

男は驚いた。
縄文人は、
卓上灯炉を見て、
まるで数千年前から知っていたかのように、
火皿を撫で、
タイルを指で叩き、
そして、
「煮るぞ」
と目で言った。

縄文の料理
根っこと獣と、ちょっとの海

彼は、
根菜を割り、
獣の肉を裂き、
貝を砕き、
それらを土器に入れて、
卓上灯炉の上に置いた。

火は静かに灯り、
湯気が立ち上がる。

その湯気は、
言葉のない文明の記憶だった。

火の哲学
「火は、待つもの」

縄文人は、火を急がない。
火は、語るものではなく、
待つもの である。

彼は火を見つめながら、
何も言わず、
何も急がず、
ただ、
「火が語るまで待つ」
という態度を貫いた。

そして、湯気が立ち上がった瞬間
文明の第一声が、静かに空に溶けた。

男はその湯気を見て、
思わず小さく呟いた。

「……これは、始まったな。」