
男は卓上灯炉に火を灯す。
小さな炎が、
昼の運河の光を遠く思わせるように揺れ、
過ぎ去った季節の影をそっと照らし出す。
クッカーから立ちのぼる湯気は、
かつて船の上から眺めた若者たちの笑い声の残り香のように揺れ、
胸の奥に沈んでいた時間へ静かに触れてくる。
猫はその湯気を目で追い、
まるで「その痛みも、あなたの一部だ」と言うように
ゆっくりと尻尾を揺らした。
男は淹れたてのコーヒーを一口味わう。
暗い室内で、
琥珀色の記憶が
ろうそくのような光の中で静かにほどけていく。
若さの光はもう届かない。
だが、その影の中でこそ見える輝きがある。
男はうつむき加減に、
胸の奥に残っていた言葉をそっと拾い上げるように呟いた。
「青春よ……ようやく、お前の輝きが見える」
トゥイーブ。
余白の方へ。