
その夜、洗面所はひんやりしていた。
水の音が止まり、静けさだけが残っている。
男はその静けさを胸に吸い込み、
ゆっくりと息を吐いた。
夜が深まる前の、
心を整える時間。
卓上灯炉に火を灯す。
ぱち、と小さな音。
炎が静けさに溶けるように揺れ、
クッカーから、
しだいに湯気が立ちのぼる。
猫は洗面所の前に座り、
夜の気配をじっと感じている。
尻尾が、ゆっくりと揺れていた。
男は湯気の向こうに、
今日の奥に沈んだ思いを見つめる。
そして、男は淹れたてのコーヒーを一口味わい、その奥にいる誰かに向けて呟く。
「友よ、静かな場所は、
心の奥を映してくれる」
トゥイーブ。
余白の方へ