
その朝、男は窓をほんの指二本ぶんだけ開けた。
外の空気が細い隙間から流れ込み、
部屋の温度が、ひと息ぶんだけ揺れる。
冷たさと温かさが触れ合うその境目は、
まだ誰にも触れられていない一日の入口のようだった。
男は卓上灯炉に火を灯す。
ぱち、と小さな音。
炎が細く伸び、
クッカーから立つ湯気が
外気に触れて、ゆっくり形を変えていく。
猫は窓辺に歩み寄り、
鼻先で新しい空気をそっと確かめた。
尻尾が、静かにひとつ揺れる。
男は淹れたてのコーヒーを一口味わい、湯気の向こうに見える風に向かい、そっと呟く。
「友よ、少しの風は、
心を新しくしてくれる」
トゥイーブ。
余白の方へ。