深夜の台所

その夜、家の中はすべて眠っていた。

灯りも声も消え、
ただ台所だけが、
ひっそりとした静けさを保っている。

男は卓上灯炉に火を灯す。
ぱち、と火が応え、
湯気が深夜の空気に淡く広がっていく。

その湯気は、
眠っている家の気配をなぞるように、
静かに漂う。

猫は足元で丸くなりながら、
耳だけをぴんと立てて、
夜の気配を聞いている。

世界が、深く沈み、
心の奥が静かに開いていく時間。

男は湯気を見つめながら、
誰にともなく呟く。

「友よ、深夜の台所は、心の声がよく響く」

トゥイーブ。

余白の方へ。