夜明け前の静けさ

日が昇る前。
世界がまだ深い静けさの中に沈んでいる時間。

男は椅子に腰を下ろし、
テーブルの上の卓上灯炉にそっと火を灯す。

ぱち、と小さな音がして、
炎がゆっくりと立ち上がる。

その上のクッカーから、
しだいに白い湯気が立ちのぼり、
闇の名残へと溶けていく。

男はその湯気をじっと見つめている。
考えているようで、
何も考えていないような、
そんな静かな背中。

窓の外では、遠くで鶏がひと声鳴く。
猫が足元を通り過ぎ、
夜と朝の境目を確かめるように伸びをする。

朝が、ゆっくりと始まる。

男はコーヒーを淹れ、
一口、口に含む。

そして、誰にともなく呟く。
「友よ、夜明け前は、心がいちばん澄む時間だ」

トゥイーブ。

余白の方へ。