
その朝、屋根を叩く雨の音が続いていた。
外はまだ薄暗く、
空気はしっとりと重く、
世界全体がゆっくりと呼吸しているようだった。
男は椅子に座り、
テーブルの上の小さな灯炉に火を灯す。
ぱち、と小さな音。
雨音の中で、その音だけが
はっきりとした輪郭を持って響く。
クッカーを置くと、
しだいに湯気が立ちのぼる。
湯気は、雨の湿気とは違う、
やわらかい温度をまとって揺れている。
猫は窓辺で丸くなり、
雨粒がガラスを滑り落ちるのを
じっと目で追っている。
男はコーヒーを淹れ、
雨の匂いと混ざるその香りを
深く吸い込んでから一口、口にする。
そして、
湯気の向こうにいる“誰か”へ向けて呟く。
「友よ、雨の日はゆっくりでいい。
世界も今日は、歩みを緩めている」
トゥイーブ。
余白の方へ。