
その夜、男は少しだけ軽かった。
外は静かで、
風も雪もないのに、
どこか世界がやわらかく感じられる夜だった。
男は椅子に座り、
テーブルの上の小さな灯炉に火を灯す。
ぱち、と小さな音。
その音が、今日の出来事を
そっと肯定してくれるように響く。
クッカーを置くと、
しだいに湯気が立ちのぼる。
湯気は、
今日の手応えを祝うでもなく、
浮かれさせるでもなく、
ただ静かに、穏やかに揺れている。
猫は足元で丸くなり、
ときどき喉を鳴らす。
男はコーヒーを淹れ、
その香りを深く吸い込んでから
一口、口にする。
そして、
湯気の向こうにいる“誰か”へ向けて呟く。
「友よ、今日はよくやったな。
こんな夜は、静かに味わえばいい」
トゥイーブ。
余白の方へ。