風のない朝

その朝は、風がなかった。

外の木々は一枚の絵のように静まり、
空気は薄い膜のように張りつめていた。

男はいつものように椅子に座り、
テーブルの上の卓上灯炉に火を灯す。

火は、風がないぶん、
まっすぐに立ち上がった。

その上のクッカーから、
しだいに湯気が立ちのぼる。

湯気はゆっくりと天井へ向かい、
途中で形を変えながら消えていく。

猫が窓辺に座り、
外の静けさをじっと見つめている。

男はコーヒーを淹れ、
湯気の向こうにある“今日”を確かめるように
一口、口にする。

そして、
誰にともなく呟く。

「友よ、静けさは味方だ。
急がずとも、今日の道は逃げていかない」

トゥイーブ。

余白の方へ。