寓話 通すために生まれ、残るために焼かれる

昔、北海道の土をこね、
職人が静かに形をつくっていた。

土は円く伸ばされ、
中が空洞にされ、
やがて窯の中へと運ばれた。

火はその土を包み、
ゆっくりと、
しかし確かに、
器としての記憶を刻み込んだ。

こうして生まれたのが、
素焼陶管だった。

陶管は思っていた。

「私は、水を通すために生まれた。
流れの道になるために焼かれた。」

地中に埋められ、
冷たい水の気配を感じながら、
長い時間を過ごした。

水が通るたび、
陶管の内側には
かすかな震えが残った。

「私は、流れの器だ。」

しかしある日、
新しい素材が導入され、
陶管は地中から掘り出された。

長い眠りから覚めた陶管は、
自分の役目が終わったことを悟った。

「私は、もう流れを通さない。」

けれど、誰も陶管を捨てなかった。

土の色はやわらかく、
焼き締まった肌には温度があり、
内側にはまだ、
火の記憶がほのかに残っていた。

ある人は、
その陶管をそっと洗い、
棚に置いた。

別の人は、
その陶管を手に取り、
光に透かして眺めた。

また別の人は、
陶管の中に耳を近づけ、
風の通り道のような音を聞いた。

陶管は思った。

「私は、もう水を通さない。
けれど、まだ何かを通すことができる。」

それが何なのかは、
まだ誰にもわからなかった。

ただ、陶管の内側には、
火に焼かれた土だけが持つ
かすかな温度が残っていた。

その温度は、
いつか別の形で
誰かの手に触れるだろう。

陶管は静かに佇みながら、
その時を待っていた。