
第十七話 御膳文化、一膳と火の間
一膳は、個の尊厳の単位。
それは「場」が尊重された翌朝のことだった。
男が卓上灯炉の火皿を整えていると、
どこからともなく、
「その火、一膳分ですね」
という、やけに静かな声。
振り返ると、
そこには御膳を運ぶ人が立っていた。
肩には布、
手には膳、
目は火の奥にある古層を見ていた。
彼は、
火を見て祖先を思い、
鍋を見て儀式を感じ、
湯気を見て秩序を思い出した。
「この器、ちょうど一膳分ですね。
まるで個の尊厳を守る寸法のよう。」
男は、
この人が何を守ろうとしているのかよくわからなかったが、
とりあえず火皿を一つだけ差し出した。
御膳の料理
「米と汁と、少しの香の物」
御膳の人は、
米をよそい、
汁を温め、
香の物を添え、
卓上灯炉に鍋を置いた。
火は静かに灯り、
湯気が立ち上がる。
その湯気は、
まるで祖先の息のようだった。
火の哲学
「一膳は、個の尊厳の単位」
御膳の人にとって、
火はただの熱ではない。
“古層との接続”である。
火の寸法、
鍋の量、
湯気の高さ、
それらすべてが、
一膳になる。
そして、
その一膳がまた火を育てる。
そして、鍋が煮えた瞬間
文明は、接続になった。
男は、
その鍋を一口味わい、
そして小さく呟いた。
「……これは、古層の味だな。」